サイト・トップ
新・漫画 ガスの話
新・漫画 ガスの話・別冊
サイト・トップ
新・漫画 ガスの話
新漫画・ガスの話 別冊 「マスク・フィルターの科学」O

三番目は1906年にブラウン運動の理論を発表した、ポーランドのスモルコフスキーです。サザーランドとアインシュタインは本職の研究者ではありませんでしたが、スモルコフスキーは統計力学などを研究する大学教授です。
3人はそれぞれ独立して同じ論文を提出、現代であれば先取権はサザーランドなのですが、当時の地球はとても広く、情報は簡単には伝わりません。3人は同時に同じ結論に達したと考えられています。ブラウン運動を説明する教科書では「アインシュタインが理論化」したという記述が多くみられます。
アインシュタインの論文を読んで、実際に実験を行おうと考えたのがフランスのペランです。ペランは既に陰極線(電子線)の研究などから原子や分子、原子の構造などの研究を行なっていた物理学者です。自分より若く、無名の特許庁職員の論文をみて、「分子」を発見しようと試みました。分子は存在すると信じる学者と、分子には実体がないとする学者が対立していた20世紀初頭、ペランは分子を発見する難解な実験を始めました。
ブラウン運動は高性能の顕微鏡で観察が可能です。しかし、微粒子の大きさを一定の範囲にそろえ、その動きを顕微鏡下で観測し、数値化する作業は簡単ではありません。5年の時間をかけて、ペランは見えないはずの水分子を見える化しました。
ブラウン運動はマクロの運動です。ものすごく小さい粒子と言っても分子とはけた違いに大きいのです。それに対して分子はナノメートルよりも小さなミクロの存在です。ミクロの分子とマクロのブラウン運動をつなぐ科学によって分子が見つかったのは1913年。わずか110年前のことです。
分子の存在は実体がなく「気のせい」だと言っていた多くの科学者がペランの結果によって転向しました。