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新漫画・ガスの話 別冊 「マスク・フィルターの科学」M

ブラウン運動を発見したロバート・ブラウンの話です。
スコットランド出身の植物学者ロバート・ブラウンは顕微鏡学の権威です。花粉の研究の中で花粉の中にある微粒子が水の中で不規則に動き続ける現象に着目して、様々な研究を行ないました。この現象は古くから発見されており、ブラウンより40年も前に木炭粉でも観測され論文に発表されていました。光合成を発見したインゲンホウスです。
しかし系統的にこの現象を観測、報告したのはブラウンが初めてだったため、後に「ブラウン運動」と呼ばれるようになりました。
ブラウンは生きた花粉からだけでなく、古い化石の中からもブラウン運動を発見し、このいつまでも続く運動の源は、生きているか否かに関わらず生物が持っている根源的な力ではないかと考えていました。「生命の原子」のようなアイデアです。
しかしブラウン運動は金属の微粉など、およそ生物とは思えないものでも観測され、不思議な現象として棚上げされてしまいました。何かが微粒子を突き動かしているように見えるのですが、その運動は「永久に」続くようです。
医者や生物学者が発見したブラウン運動、その謎は80年後に物理学者達によって解明されることになります。
なお、ブラウンが観測した微粒子の運動が、200年も前の顕微鏡で本当に観測できたのか?という疑念が1990年代に沸き起こりました。英国の顕微鏡学者ブライアンJ.フォードによって検証が行われ、ブラウンの顕微鏡で観測が可能であったことが立証されています。
科学史の中には、怪しい実験や観測がたくさんあり、20世紀以降の科学で、当時の科学技術力によって、その実験が本当に正しく行われたのかといった研究が行われています。
ガリレオ・ガリレイの力学実験のほとんどは「思考実験」であって実際には不可能なこと、ニュートンやドルトンの計算や実験には間違いや嘘が多いこと、などが判明しています。ブラウンの時代の顕微鏡や照明で果たしてブラウン運動が観察できたのか?という疑問も当然起こります。中学校の理科の教科書には簡単に観察できるように書いているものもあるようですが、ものすごく小さな微粒子でしか見られないブラウン運動は簡単な顕微鏡や実験装置では難しいようです。