サイト・トップ
新・漫画 ガスの話
新・漫画 ガスの話 
サイト・トップ
新・漫画 ガスの話
新・漫画ガスの話 74

作成日2020/11/05 更新日2022/04/10 コメント2023/07/26

Fガスの科学/原子・分子の話 ブラウン運動の説明の間違い

教科書に載ったブラウン運動ですが、長い間、間違った解説が行われていました。

水分子の運動では、花粉は動かないのでブラウン運動を観察することはできません。実際は、花粉の中にある非常に小さなコロイド・微粒子を顕微鏡で観察するとブラウン運動が見られるのですが、大きな花粉が動くのが簡単な顕微鏡で見られると書いた学者が大勢いたのです。
この間違いが発覚して大きな事件となったきっかけは、NHKが科学番組を制作しようとして実験準備を行なった時でした。番組スタッフが教科書通りに道具を用意してリハーサルを行ってもブラウン運動は全く観測されないのです。
当たり前ですが、花粉のような大きな粒子は常温の水分子の運動ではほとんど動きません。理科の教科書に嘘が書かれていたことに驚いた担当者はその後大変な苦労をされたようです。何と言っても理科の教科書を書いた人々やこれを出版、検定している人たちは科学の権威なのです。
「花粉」と「花粉の中の微粒子」の書き間違いであれば些細なことのように思えますが、ことは重大です。解説の中には、花粉の準備や顕微鏡の倍率などが書かれていて、さも実際に観測した人が書いたかのように嘘が書かれているのです。サッカーボールの上に乗ったホコリは息を吹きかければ飛びますが、サッカーボールに息を吹きかけても動く訳がありません。そのくらい大きな違いなのですが、最も重大なのは、実際にやってもいない実験をやったかのように記述していることです。
科学の世界で「権威」をはなから信じてしまい、自分で考える習慣を忘れると、こういうことが起り、まして教育現場ですら嘘を拡散するという大きな教訓を生んだ事件です。