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新・漫画ガスの話 52

作成日2020/10/25 更新日2022/04/06

Eガスの科学/温度の話 気球と空気

シャルルとゲイ=リュサック、シャルルの法則を発見した人たちは気球乗りでした。

ゲイ=リュサックは高度が変わっても酸素濃度が変わらないことを発見しました。空気の中に酸素が含まれており、それは生物にとって必要なガスであり、空気の5分の1を占めることが分かっていました。そして山に登って高度が高くなると気圧が低くなることも分かっていました。しかし、気球で登るほどの高空の空気に酸素が含まれているのか、その濃度はどうなっているのか、という知見はありません。
彼らは、実際に気球に乗り高空にのぼり、空気を集め、気圧が下がっても空気の組成が変わらないということを確認しました。今では常識として知られていることも最初は、おっかなびっくりです。科学者たちが行った無茶な大冒険によって高空の酸素濃度は地上と変わらないということが確かめられたのです。
時々、高地で「酸素濃度が低い」ということを話すテレビの解説を聴くと、先人たちの偉業が無視されたようで、とてもがっかりします。
空気が薄いということと酸素濃度が低いということはイコールではありません。濃度は変わりません。なんでもかんでも「分圧」で考えるのはとても危険です。
たとえば、標高1500mで生活して無事だからと言って、その酸素分圧と同じ環境を海抜ゼロのところで、低酸素濃度の空気として安易に使うのは非常に危険です。労働安全衛生法では、酸素の分圧ではなく、酸素の濃度で安全範囲を規定しています。ただし、これは標準大気圧の空気が前提です。
高地に住む人は常に低気圧の環境にいる訳ですが、低気圧と低酸素濃度はイコールではありません。世界の人口の大半は海抜ゼロに近いところに住んでいますが、中にはアンデスやヒマラヤのように高地に住む人々もいます。
高地に住むという意味を考えてみると、常に低気圧の状態であり、上空の空気・大気が少ないため太陽や宇宙からの紫外線や宇宙線が非常に多く、岩場も多いため地球からの放射線も強い場所が多くなります。高地に街ができれば、大気汚染の被害は大きくなり、や森林に囲まれていればPM2.5の放出も多くなります。平地に住む多くの現代人から見ると、高地に住むって本当に過酷です。