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新・漫画ガスの話 225

作成日2021/03/03 更新日2022/05/16 コメント2023/01/31

23 ガスの化学/同位体の話 放射性核種と安定核種

元素の種類は118、天然(地球上)に存在する元素は92。存在が確認できる核種は3299あり、そのうち安定同位体とされているのは279しかないので、核種の9割以上は放射性です。

原子核が崩壊して他の元素に変わる(壊変する)ということは科学史に残る大発見です。全ての原子核は「いつかは」崩壊しますが、人間が知る時間の長さの中ではびくともせず、崩壊が観測できない核種を安定核種と考えます。
安定核種と放射性核種の線引きははっきりと定義されてはいません。放射性とされていてもものすごく半減期(あるいは寿命)が長い核種もあれば、おそらく放射性だと思われていても崩壊が確認されていない核種もあります。たとえばウラン238の半減期は約45億年、ものすごく長いように思われますが、ウラン238は放射性核種であり放射線が出ています。半減期がどのくらい長いと安定同位体とみなすのか、どのくらい短いと放射性とするのか明確な基準はありません。

極論すると、壊れない原子はないはずです。宇宙が始まった時の非常に高エネルギーの状態では原子核も原子も存在しなかったのですから、どんな環境でも原子が存在できる訳ではありません。
今の地球上の環境でも原子はいつかは壊れるに違いありません。安定しているように見える原子でも、ものすごい数を調べれば、そのうち1個くらい壊れてもおかしくありません。現在の技術では10の19乗年よりも長い半減期のものは測定が難しいようですが、安定と放射性の線引きは何となくぼんやりとしています。
放射性核種を含む物質を「放射性物質」と呼びますが、これも厳密ではありません。わずかでも放射性核種を含むというのであれば、地球上の全ての物質が放射性物質です。
海水や岩の中にはウランやカリウムが含まれています。
ネオジムのようなレアアース類には放射性核種が含まれていますがこれを除去して使用することはできないので磁石やモーターを放射性物質として取り扱うことはありません。生物は放射性核種を含むので、食物の全てが放射性核種を含んでいます。バナナの様にカリウムを多く含む食物からは放射線が出ています。動植物の全てが放射性核種を持っているので、どこから「放射性物質」と呼ぶのかは、科学的に決めることはできません。
溶接棒の中にはトリタン(トリウムタングステン)を使ったものがありますが、トリウムは放射性核種しかないので、放射線を出しています。
法律で「放射性物質」とされているものには、放射線防御などの観点から取り扱いや取引に厳しい規制があります。放射性物質というのは法令で決めるしかありません。

一方、天然にはほとんど放射性核種を含まない元素が80種類あります。たとえば酸素や窒素は天然には安定同位体だけしか持たない元素です。