サイト・トップ
新・漫画 ガスの話
新・漫画 ガスの話 
サイト・トップ
新・漫画 ガスの話
「新・漫画ガスの話」3 
作成日2020/10/03 更新日2022/04/02
http://www.pupukids.com/jp/gas-manga2/0003.jpg
@ガスの話/はじまり はじまり ガス会社のはじまり@

ライムライトに使う酸素ガスは空気中からバリウムを使って分離されました。
酸化バリウムを使って温度の違いで反応の向きを変えて酸素を出し入れする反応は、ゲイ・リュサックが発見し、同じフランスのブサンゴーが実用化に挑戦したものです。どうしてもうまくいかないプロセスを成功させたのは英国からの留学生ブリン兄弟でした。酸素を発生させるプロセスを阻害していたのは空気中の二酸化炭素や水蒸気などの不純物、これを効率よく除去することによって酸素の発生を継続させることに成功したのです。

このブリンプロセス、1992年に発行されたガスレビュー誌の増刊「空気分離のすべて」という特集記事に解説が載っているのですが、説明に大きな間違いがあります。反応温度を1000℃と1700℃としているのですが、こんな高い温度の反応装置を工業化することはほぼ不可能です。ほとんどの金属はこんな高温で使うことはできません。

華氏とセ氏を間違えたと考えるしかありません。実際にブリンプロセスを試してみようと思う人はいないので実害はないでしょうが、執筆者はこの異常な高温を不思議に思わなかったのでしょうか。出版前に、ここまで大きな数字の間違いに誰も気付かなかったのかなと思います

空気分離について書かれている日本語の本はほとんど見つかりません。したがって「空気分離の特集号」というのはとても貴重な出版なのです、多くの人が参考にし、引用していると思います。しかし、よく読むと科学的におかしな記述や史実の間違い、数字の間違い、用語の間違いなどが多数見つかります。ブリンプロセスについても「ブサンゴーが発見した原理」とありますが、これは、ゲイ=リュサックが見出した化学反応のひとつであって「発見した原理」などという大げさなものではありません。「1800年初頭にはアルコール精留理論が確立され、沸点差の違う物質を気液平衡状態にするとお互いが分離するということは解っていた」というくだりは「沸点差の違う物質」というところから意味不明です。
出版物というのは、誤字・脱字・誤植のかたまりで数字の間違い、数式の間違いも多数見られるのが普通です。改訂版の出ない(売れない)本では、ミスは決定的です。現在では正誤表がネット上に公開されることが多くなっていますが、古い本では間違ったままというのも多くあります。