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第33回 カラム(4)van der Waals の読み方
 2017/12/05

van を ファンと読むかヴァンと読むか
ヨハネズ・ディーデリク・ファン・デア・ヴァールス Johannes Diderik van der Waals
 オランダ人である彼の名前は、「ヨハネズ・ディーデリク・ファン・デア・ヴァールス」と読むべきなのかも知れないが、日本では「ファン・デル・ワールス」と書かれる。
   オランダ語の van とは 日本語の「の」、英語の of のようなもので、人名の場合、姓の一部に用いられ、「ファン・デル・ワールス」まで続けて姓である。
  発音はドイツ語と同じような「ファン」であるが、英語圏では「ヴァン」と発音され、日本に伝わる場合には、両方が使われている。
原文
原語に近い発音
英語圏
日本での通称
Johannes Diderik van der Waals ヨハネズ・ディーデリク・ファン・デア・ヴァールス ヨハン・ディーデリク・ヴァン・デア・ワールス ヨハネス・ファン・デル・ワールス
Ludwig van Beethoven ルートヴィヒ・ファン・ベートホーフェン ラディック・ヴァン・ベートーヴェン ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン
Vincent Willem van Gogh フィンセント・ヴィレム・ファン・ゴッホ ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ ゴッホ
ファン・ゴッホ
Jacobus Henricus van 't Hoff ヤコブス・ヘンリクス・ファント・ホッフ ジェイコブ・ヘンリカス・ヴァント・ハーク ファント・ホッフ
Henricus Nicolas van den Hurk ヘンリークス・ニコラース・ファン・デン・フルク ヘンリカス・ニコラス・ヴァン・デン・ハーク リック・バンデンハーク
James Alfred Van Allen ジェイムズ・アルフレッド・ヴァン・アレン   ヴァン・アレン
Guillaume van den Plas ファン・デン・プラス ヴァンデン・プラ
vanden Plas
バンデン・プラ
   ファン・デル・ワールスの場合は、vanはオランダ語読み、Waalsは英語読み。
   ベートーヴェンはドイツ人であるが、先祖がオランダであるため、名前にvan が入っており、 原語に近い発音としては、ルートヴィヒ・ファン・ベートホーフェンである。日本で使われているルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンという読み方は、かなり英語に近いが、名前のルートヴィヒはドイツ語式読まれる。なお、打楽器で有名な米国の「Ludwig-Musser ラディック・ムーサー社」は、創業者のウィリアム・フリードリヒ・ルートヴィヒとテオバルト・ルートヴィヒ兄弟から来ており、彼らの場合はベートーヴェンのような名前ではなく姓がルートヴィヒである。
   van は姓の一部なので本来は切り離すことができないが、 ファン・ゴッホの場合は、日本では単にゴッホだけでも通じる。ヴァン・ベートーベンとファン・ゴッホは、あまりにも有名でファンやヴァンを省略した名前で十分に通じるが、さすがのファン・デル・ワールスもそこまでの有名人ではない。
   リック・バンデンハークは、福岡ソフトバンク・ホークスのピッチャーであるが、米国大リーグの経験もあり、日本の登録名は英語読みに近い。ファン→ヴァン→バンとなっており、フルクも英語読みのハークになっているので、ファン・デン・フルクが登録名ではバンデンハークに変わっている。
   ファン・デン・プラスは有名なベルギーのコーチビルダーであり、現在でも英国車などの高級ブランド名として残っている。ベルギーではオランダ語とフランス語が使われるため、オランダ語で「ファン・デン・プラス」、フランス語で「ヴァンデン・プラ」となる。ファン・デン・プラスの英国支社は、独自の発展をして、ロールス・ロイス社、ベントレー社などの車体を製作したため、英国では「ヴァンデン・プラ」のブランド名が使われるようになった。
 英国ではフランスの首都「パリ」を「パリス」と発音するが、この「ヴァンデン・プラ」も「ヴァンデン・プラス」と発音することがある。この場合は、オランダ語の「ファン・デン・プラス」とフランス語の「ヴァンデン・プラ」を合わせたようなものになる。
von の場合
   ドイツ語のvon フォンは英語の of に相当する 前置詞であるが、王侯貴族の名前の場合、姓の前につけるという習慣がある。科学者の中にはフォンの付く人物も少なくない。von を単なる前置詞として省略してもよいのか、あるいは名前の一部として必ずvon をつけるのかは定かではないが、日本での通称もフォンがつく場合とつかない場合がある。
原文
原語に近い発音
日本での通称
備考
Carl von Linne カール・フォン・リンネ リンネ 「分類学の父」
Carl von Linde カール・フォン・リンデ カール・フォン・リンデ リンデプロセス
Otto von Guericke オットー・フォン・ゲーリケ ゲーリケ マクデブルクの半球実験
Friedrich Heinrich Alexander, Freiherr von Humboldt フリードリヒ・ハインリヒ・アレクサンダー・フォン・フンボルト フンボルト 近代地理学の祖
Philipp Franz Balthasar von Siebold フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルト シーボルト 出島の三学者
エンゲルベルト・ケンペル、カール・ツンベルク、フォン・シーボルト
Justus Freiherr von Liebig ユストゥス・フォン・リービッヒ リービッヒ 有機化学の確立
Ernst Werner von Siemens エルンスト・ヴェルナー・フォン・ジーメンス ジーメンス、 シーメンス SI単位「ジーメンス」
Johannes Ludwig von Neumann ヨハネス・ルートヴィヒ・フォン・ノイマン フォン・ノイマン 数学、原子核、コンピュータ
Theodore von Karman セオドア・フォン・カルマン カルマン 「航空工学の父」
Wernher Magnus Maximilian Freiherr von Braun ヴェルナー・フォン・ブラウン フォン・ブラウン 米国の宇宙開発
Johann Wolfgang von Goethe ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ ゲーテ  
Ferdinand Adolf Heinrich August Graf von Zeppelin フェルディナント・フォン・ツェッペリン ツェッペリン伯 ドイツの発明家・企業家
Wolfgang Alexander Albert Eduard Maximilian Reichsgraf Berghe von Trips ヴォルフガング・フォン・トリップス フォン・トリップス 1950年代のF1ドライバー
Herbert von Karajan ヘルベルト・フォン・カラヤン カラヤン 指揮者「楽壇の帝王」
Georg Ludwig von Trapp ゲオルク・ルードヴィッシ・フォン・トラップ フォン・トラップ艦長 ミュージカル・映画『サウンド・オブ・ミュージック』のモデル
Maria Augusta von Trapp マリア・アウグスタ・フォン・トラップ マリア・トラップ